かゆくておなやみの方に見られる疾患
皮脂欠乏性湿疹
老化や空気の乾燥、洗いすぎが原因で、皮膚表面が乾燥してカサカサしたり、白い粉をふいたりすることがあります。このような乾皮症(乾燥肌)の状態になると皮膚のバリア機能が低下してしまいます。刺激を受けやすくなった皮膚が湿疹化してかゆみが強くなった状態が皮脂欠乏性湿疹です。
冬季にご高齢の方の下腿に生じることが多いです。
皮脂欠乏性湿疹の治療
治療は保湿剤が主体となり、炎症を伴う場合には、ステロイド外用薬を使用します。痒みが強い時は抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服します。
日常生活では加湿器を使用し、下腿をストーブなどに長時間あてたり電気毛布を一晩中使用したりしないようにご注意ください。
また入浴の時にこすりすぎで悪化することも多いです。
お風呂上りに水気をタオルでそっとふき取った後、皮膚がしっとりしている内に保湿剤を外用する習慣をつけることで予防することができます。
アトピー性皮膚炎
スキンケアと外用薬でいい状態を維持していきましょう
手荒れ(手湿疹)・汗疱(異汗性湿疹)
脂漏性皮膚炎
慢性的に経過することが多いです まずは清潔に
脂腺の多いところに生じる湿疹で、頭部や顔、胸背部などにできやすいのが特徴です。新生児や乳児にも多く見られますが、成長につれて自然にできなくなってきます。
問題になるのは中高年の場合で、頭、顔、耳などにフケがしつこく出て、痒みもあり、治ったと思っても再発し憂うつなものです。
原因としては、皮脂成分の質的異常や皮膚機能の老化、でんぷう菌(マラセチア)というカビの一種の感染が関与していると考えられています。
脂漏性皮膚炎の治療
脂漏性皮膚炎の治療としては、強過ぎないように気をつけながらも、しっかり洗うのが基本です。その後にステロイド軟膏や免疫抑制外用薬、でんぷう菌に効く抗真菌剤を塗ります。
ただきれいにしようと耳掃除をしすぎるのはよくありません。また飲酒でも増悪することがありますので、規則的な生活習慣が大切です。
接触皮膚炎(かぶれ)
チタンを含むパッチテストを行っています
皮膚に直接触れたものの刺激や毒性が原因となって起こる炎症や湿疹を接触皮膚炎(かぶれ)と言います。原因が明らかな場合は通常、例えば「うるしかぶれ」「ぎんなん皮膚炎」など、原因物質の名前をつけて称されます。
皮膚科の外用薬でもかぶれを引き起こすことがあります。また光接触皮膚炎と言って、湿布薬などを貼った後に日光に当たると発疹がでることもあり、注意が必要です。
原因が明らかでない場合は、「パッチテスト」を行います。
パッチテストについて
パッチテストとは、原因と思われる物質をテープで背中や腕に48時間貼りつけて反応を見る検査です。
当院では整形外科の手術で使われることが多いチタンなどの金属パッチテスト、歯科金属、毛染め剤の成分であるパラフェニレンジアミンや、ゴム製品の成分のパッチテストなどを施行しています。
テープを貼ってから48時間後にはがして1回目の判定をします。その後、貼ってから72時間後と1週間後以降の合計3回の判定して最終的な診断をします。
巣鴨さくらなみき皮膚科では月曜日、水曜日、土曜日にパッチテストを開始することができます。 表のとおり3回判定まで合計4回の通院が必要になります。通院する時刻は検査開始日と同じ時刻が望ましいです。(月曜日に午前10時にテープを貼ったら、水曜日も午前10時に来院する、など)
また1回目の判定の時は、テープをはがした後30分程度おいてからの判定になるため、時間の余裕をもって来院してください。
検査開始日(受付可能時間) | 48時間後1回目判定 | 2回目判定 | 3回目判定 |
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月曜日(9:30-12:00,14:30-17:00) | 水曜日 | 金曜日 | 翌週月曜日 |
水曜日(9:30-12:00) | 金曜日 | 土曜日 | 翌週水曜日 |
土曜日(9:30-12:00) | 翌週月曜日 | 火曜日 | 土曜日 |
- パッチテスト中はぬらしたり、汗をかいたり、こすったりしないよう注意が必要です。
- 汗をかく夏場のパッチテストはなるべく避けてください。
- シールをはがした後、皮膚にマークを付けます。汚れてもいい下着を着用してください。
- パッチテスト中にかゆみがでたり、赤くなったり、色素沈着などが起きたりする事があります。反応のあとがしばらく残ることがあります。
- テープでかぶれる可能性があります。
- まれにパッチテストをすることで感作されてかぶれる体質になることがあります。
- パッチテスト反応の判定は医師が行います。赤くなっても反応の程度や範囲により陽性の判定にはなりませんのでご了承ください。
ご不安なことやご質問がありましたら受診時にお尋ねください。
接触皮膚炎(かぶれ)の治療
原因物質がわかったら、まずはその物質が含まれるものに接しないようにします。短期間ステロイド外用薬を使用し、痒みが強い場合は抗アレルギー薬の飲み薬などを用いて治療します。職業で使う物質にかぶれている場合には何らかの対応が必要になることもあります。
じんましん
からだに合う飲み薬を探しましょう
体の皮膚のやわらかい部位を中心に、痒みの強い、わずかに盛り上がったみみず腫れのような発疹ができ、数分~24時間以内に消えていく皮膚疾患をじんましんと言います。発疹が出ては消えるため、移動しているように見えることもあります。
多くは強い痒みを伴いますが、チクチクとした痛みや、熱く焼けつくような痛みが生じることもあります。温度の変化に伴って出現するものや、じんましんの一種でまぶたやくちびるが腫れるものもあります。
6週間以内に治るものを急性じんましん、それ以上の期間にわたって断続的に発症するものを慢性じんましんと呼びます。
じんましんの原因はさまざまです。中には食べ物や内服薬、細菌やウィルスの感染などが原因でなる方もいます。思い当たる食べ物などがあれば、採血して原因をある程度確認できることもあります。しかし、慢性じんましんでは、原因が特定できないことが少なくありません。疲労や風邪がきっかけで悪化したり、入浴や血行が良くなることでかゆみが強くなったりする方も多いです。
夕方から夜にかけて発疹が強くなり、皮膚科受診時は症状がないことも多いので、発疹が出た時の画像を見せていただくと診察の参考になります。
じんましんの治療
じんましんの治療には、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤などの飲み薬を使います。症状をみながら、それぞれの体にあった飲み薬を選んでいくのが重要です。体にあった薬を内服すれば、多くの人は症状が治まっていきますが、急にやめてしまうと再発することがあります。最近では眠気の出にくい内服薬が開発されています。ライフスタイルや症状に合わせて、合う飲み薬を調整していきます。
いずれにしても医師の指示に従って飲み続け、急に中止するのではなく徐々に減らしていくことが大切です。
症状が強く抗アレルギー剤を内服しても効果がない場合は、内服薬の量や種類を調節したり、H2受容体拮抗薬や抗ロイコトリエン拮抗薬などの内服薬を併用したりすることもあります。
内服薬を調整しても効果が見られない慢性の重症な蕁麻疹では生物学的製剤オマリズマブ(ゾレア)の注射療法も行っております。12歳以上の方が対象となりますのでご相談ください。
虫刺され
ひっかく前に外用を
蚊、ダニ、ノミ、ブユ、ハチ、ケムシなどによる虫刺されは、日常的によく起こります。
虫に刺されたり咬まれたり、また毛虫などに触れたりした時に、虫が持っている物質が人間の皮膚内に注入され、赤みや水ぶくれ、痒みや痛みなど様々な症状が起きてきます。ハチにさされた後には、血圧低下や意識消失など、強いアレルギー反応(アナフィラキシーショック※)が起こることもあり、注意が必要です。
- ※アナフィラキシーショックについて
- アナフィラキシーショックとは、ハチ毒や薬物、食物などが原因となって極めて短い時間のうちに激しいアレルギー反応が全身に生じ、血圧低下や呼吸困難、意識障害などが起こって生命の危険を伴うこともありうるショック状態を言います。
過去にアナフィラキシーショックを起こしたことがある方、または今後起こす危険性があると思われる方には、緊急時に備えてエピヘン(アドレナリン自己注射)を携帯することをお勧めします。エピペンは、アナフィラキシーが現れたときに使用し、症状の進行を一時的に緩和してショックを防ぐための補助治療剤です。
当院で処方可能ですのでご相談ください。
虫刺されによる症状
虫刺されによって生じる皮膚症状には、大きく「痛み」と「痒み」の二つがあります。
痛みには、虫が皮膚を刺したり咬んだりすることによる物理的な痛みが一つ、もう一つは皮膚に注入された物質の化学的刺激による痛みです。
痒みは、皮膚に注入された物質(唾液腺物質や毒成分)に対するアレルギー反応によって引き起こされます。このアレルギー反応には、すぐに起こる「即時型反応」とゆっくり起こる「遅延型反応」があります。
即時型反応は、虫に刺された直後から痒みや発赤、じんましんのような発疹が現れるもので、数時間後に症状は軽くなります。
また遅延型反応では、虫に刺されてから1~2日後に痒み、発赤、ブツブツ、水ぶくれなどが現れ、数日~1週間程度で症状は軽くなります。
これらの反応の現れ方は、虫に刺された頻度やその人の体質、年齢によって大きな差があり、同じ人でも年齢によって変化していきます。
虫刺されに対する治療
刺されたら、なるべく早くステロイド軟膏を外用します。腫れや痒みが強い場合は、抗生物質や抗アレルギー薬の内服、症状が強い時はステロイド薬の内服が必要になります。
痒いからといって患部を掻き壊すと、とびひ(伝染性膿痂疹)や自家感作性皮膚炎になり全身にひろがったり、治りにくい痒疹や皮膚線維腫になり、長期化したりすることがありますので、早めの皮膚科への受診をお勧めします。
皮膚掻痒症
かゆみを繰り返す疾患です
皮膚を見ても何もできていないのに、痒みが生じる疾患です。「痛いのは耐えられるけど、痒いのは耐えられない」と言われる方もいます。全身のいたるところが痒くなるケースと、陰部などの限られた部分だけが痒くなるケースがあります。
しかし、痒みが起こるメカニズムは、十分には解明されていません。肌の乾燥のためにちょっとした刺激で痒くなることもありますが、それだけでなく、腎臓、肝臓・胆道系、糖尿病やホルモン異常、血液疾患、悪性腫瘍、さらには内服薬なども原因になっていることがあります。これらによる痒みの起こり方は、じんましんや湿疹の時にみられる痒みとは同じではないと言われます。発作的に「痒みが襲ってくる」「体の中から痒みが湧いてくる」などと表現されることもあります。
皮膚掻痒症の治療
原因となっている病気がある場合には、その治療が必要です。また肌が乾燥していることが多いので、保湿薬をしっかり塗ることが大切です。抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬もある程度の効果が期待できますが、皮膚掻痒症による痒みは、ヒスタミン以外の物質によっても生じていると考えられ、完全に症状を止めることが難しいこともあります。日常生活や下着の選び方、せっけんやシャンプーの選び方も重要になってきます。必要に応じてその他の内服薬やナローバンドUVB紫外線療法を併用しながら経過を見ていきます。