できものでおなやみの方に見られる疾患
老人性イボ(脂漏性角化症、老人性疣贅)
加齢(皮膚の老化)とともに顔や頭、体に増えてくる皮膚の良性腫瘍です。老人性イボとも呼ばれますが紫外線などの影響で30代頃からできてくることがあります。初めは平たんなものが、次第に盛り上がってゆっくりと大きくなっていきます。
紫外線や遺伝による影響が大きいと言われ、うつるものではありませんが、加齢とともに増えていきます。大きさは5ミリ~数センチくらいとバラつきがあり、形状は平らなものから隆起するものまで様々で、色も肌色から褐色、黒色までいろいろです。自覚症状はありませんが、まれに痒みを伴うことがあります。
日光角化症や悪性黒色腫などの悪性腫瘍との鑑別が必要なこともあり、ダーモスコピー検査で診断します。
脂漏性角化症(老人性疣贅)の治療
放置しても問題はありませんが、気になる場合は液体窒素療法、中周波治療(デルマトロン)、レーザー、手術などで除去していきます。悪性腫瘍との鑑別が必要な時は局所麻酔をして手術で切除し、病理検査をします。
首のイボ(アクロコルドン)
30代ころから、首やわきなどに小さなイボがポツポツとできることがあります。人目につきやすかったり、手で触った時のブツブツした感じが気になったりして治療を希望される方も少なくありません。またネックレスや衣類に引っ張られたりすると、かゆみの原因になることもあります。
加齢にともなう腫瘍性の変化であり、少しずつ増えたり大きくなったりしますが、ひとにうつすことはありません。
首のイボ(アクロコルドン)の治療
放置しても問題はありませんが、気になる時は、切除や液体窒素療法、中周波治療(デルマトロン)、レーザーによる治療を行います。それぞれの治療法に長所短所がありますので、ご相談ください。
- 中周波(デルマトロン)
- 中周波(デルマトロン)とは、中周波域の微弱電流によって皮膚の表面を薄く焼いて除去し、新しい皮膚を再生するという方法です。微弱電流なので、治療中は微かな刺激を感じる程度で、基本的に麻酔の必要はありません。
首のイボや脂漏性角化症などの老人性のイボは、皮膚の一番外側に生じているため、中周波で治療することができます。また、皮膚の表面にある老人性のシミの治療にも適しています。色に反応するレーザーとは異なり、色の薄いシミにも使えます。
皮膚の基底層より浅い部分に作用するため損傷が小さく、炎症後の色素沈着や傷跡などのトラブルが少ない安全性の高い治療法です。
一度の治療では取り切れないこともあり、約1週間から1か月間隔で数回の治療を継続していきます。治療後は絆創膏を貼る必要はありませんが、日焼け止めは外用してください。
はい粒腫(ひ粒腫)
はい粒腫(ひ粒腫)とは、皮膚の表面に、小さな白い角質の粒ができる疾患で、毛穴の奥にある袋(毛包)や皮脂を作る腺に角質が溜まって生じます。
顔面に多く、直径1~2ミリくらいの半球状に隆起した白いしこりができ、少し光ってみえることもあります。
放っておいても特に問題はありませんが、加齢とともに増えていくこともあります。また子どもでも傷のあとなどにできることがあります。
はい粒腫(ひ粒腫)の治療
気になって取り除きたい場合には、注射針の先などで粒の表面に穴をあけ、中に溜まった物質を押し出すか、針先を使って除去していきます。
ほくろ
ほくろ(色素性母斑)は、皮膚の一部に母斑細胞が集まったものです。生まれた時からあるものや大人になってから目立ってくるものもあります。
形も様々で、扁平なものから隆起したものまでいろいろなタイプに分類されます。
顔のほくろでは、子どもの時には平坦で色が気になるだけだったものが、加齢とともに隆起し、さらに歳を重ねると色調が変化し淡くなることがあります。
ほくろは皮膚悪性腫瘍、特に悪性黒色腫や基底細胞癌との鑑別が重要です。短期間で急に大きくなったり、色が濃くなったり、色素が周囲の皮膚に染み出してきたり、出血してきたりしたような場合は皮膚科を受診してください。
特に足の裏は普段見ることが少ない場所ですので、足の裏にほくろがあり気になる時は一度皮膚科を受診しダーモスコピー検査をお勧めいたします。
ほくろの治療
悪性の疑いが無ければ放置して構いませんが、希望があれば手術やレーザーで治療します。
悪性の疑いがある場合には、一部を生検するか、全体を切除して病理検査で判断します。
指趾粘液のう腫
指趾粘液のう腫は、手足のゆびの爪の付け根部分と第一関節の間にできる半透明なしこりです。粘液が過剰に産生されたり、関節内の潤滑剤である滑液が、周囲の組織内に出てきたりして生じると考えられています。大きさは数ミリ~1センチ未満くらいで、ドームのように盛り上がっており、中には粘液が入っています。爪のそばにできると爪が変形することもあります。
指趾粘液のう腫の治療
清潔な針で刺すと中から粘液状の内容物が出てきます。内容物を出し切って強く圧迫したり、液体窒素で凍結したりして治療していきますが、再発することも多い疾患です。
ケロイド・肥厚性瘢痕
傷が治癒する過程において傷を埋める膠原繊維が過剰に増殖し、本来の埋めるはずの範囲を超えて拡大し、しこりのようになったものです。傷の範囲を超えて周囲に拡大していくものをケロイド、組織の増殖が傷の部位に限られるものを肥厚性瘢痕と呼びます。
帝王切開などの手術の傷や、胸にできたニキビのあと、耳のピアス部などにできることがあります。
ケロイド・肥厚性瘢痕の治療
治療としては、トラニラストを内服したり、ステロイド外用薬を病変部に塗ったり、貼ったりして経過を見ます。ステロイド注射薬を直接隆起した部位に注射する方法もよく行われます。またテープ剤やシリコンゲルシートなどを当て、患部を圧迫する治療法もあります。
新しい病変を作らないように注意することも重要です。
皮膚腫瘍(皮膚がん)
気になるものがあればご相談ください
皮膚に生じた「できもの」のことを皮膚腫瘍と言います。組織の一部が増殖したもので、下表のようにいろいろなものが知られています。
腫瘍は、大きく良性と悪性の2種類に分けられます。良性腫瘍は一般に増殖が緩やかで、その場所で少しずつ大きくなりますが、生命をおびやかすようなことはありません。一方の悪性腫瘍(がん)は近くの組織に進入したり、遠隔転移したりして増え続けていき、生命にも影響してきます。
一見、ほくろやシミなどと紛らわしい皮膚がん(悪性黒色腫など)もありますので、レーザーや手術で取る前に、ダーモスコピーという機器を使って観察し診断することが重要です。皮膚に気になる変化がありましたら、早めに皮膚科専門医にご相談ください。
主な皮膚腫瘍とその治療法
- 粉瘤
- 皮膚が毛穴の奥で袋を作り、中に老廃物や皮脂が溜まった球状の腫瘍。外科的に切除。
- ほくろ
- 皮膚の一部に母斑細胞が集まったもの。外科的切除やレーザー治療。
- 石灰化上皮腫
- 子どもや若い人の皮膚のすぐ内側にカルシウムが沈着し、石灰の様に硬くなる良性腫瘍。外科的に切除。
- 稗粒腫
- 白くて硬い直径1~2ミリのブツブツで、主に目の周囲にたくさんできる。中身をつまみ取り摘除。
- 汗管腫
- 汗管が増殖してできたもので、眼の下に多発する小型で扁平に隆起した発疹。切除やレーザー治療。
- 脂漏性角化症
- 加齢(皮膚の老化)とともに増える、いぼの一種(年寄りいぼ)。液体窒素療法、中周波(デルマトロン)、レーザー治療、切除術。
- 日光角化症
- 日光を浴び続けたことによる皮膚疾患で、皮膚がんのごく早期の病変。外用療法、液体窒素療法、外科的切除。
- ボーエン病
- 皮膚表面の表皮内部に生じるがんの一種。外科的切除。
- 皮膚がん
- 基底細胞がん(上皮系の細胞が悪性化した腫瘍)や悪性黒色腫(皮膚のメラニン色素を作る細胞が悪性化した腫瘍)、有棘細胞がん(角化細胞が悪性増殖した腫瘍)など。大きさやステージに応じた治療。