うつる皮膚疾患について
水虫(足白癬)、爪白癬
あやしいと思ったら何も塗らずに受診してください
地球上にはカビ(真菌)がたくさん存在しており、私たち人間と共存しています。乳酸菌や納豆菌などの生活に役立つものばかりでなく、人間に病気を起こすカビもいます。水虫菌もその一つです。水虫菌は正式には白癬菌(皮膚糸状菌)と呼ばれます。水虫では、この白癬菌という真菌の一種が寄生して、手足の指の間や足の裏などの皮がめくれてきます。ジュクジュクとしたり、痒みが出てきたりもしますが、自覚症状がないことの方が多く、知らずにまわりの人にうつしていることもあります。
診断にあたっては、まずは顕微鏡を使って白癬菌がいるか検査を行います。
水虫に似た湿疹などの疾患もあるため、まずはきちんと検査をすることが重要です。皮膚科を受診する前に市販の水虫薬を塗ってしまうと、検査しても菌が見えなかったり、薬でかぶれて悪化したりすることもありますので、なるべく外用する前に受診してください。
足白癬の種類
足白癬は趾間型、小水疱型、角質増殖型の3種類に分類されます。
- 趾間型
- 特に4番目と5番目の足ゆびの間にできることが多いです。足ゆびの間の皮膚がふやけたように白くなり、痒くなることもあります。冬はいったん症状が治まりますが、春から夏にかけて再発します。また、2次的に細菌感染を起こすこともありますので、特に糖尿病の方は注意が必要です。
- 小水疱型
- 土踏まずから足の縁に小さな水ぶくれが多発します。夏季に悪化することが多く、強い痒みを伴うこともあります。水ぶくれが乾くと、皮が剥けてきます。
- 角質増殖型
- かかとを中心に足の裏から縁にかけての広い範囲で皮膚が厚くなり、特に冬季に乾燥でひび割れを起こしやすくなります。痒みを伴わないので水虫だと気づかないまま、まわりの人に菌をひろげる原因になっていることもあります。
爪白癬
爪にできる水虫のことです。痒みは伴いませんが、爪が一部分だけ線状に黄白色のすじが入ったり、全体が変色して粉っぽくなったり、分厚くなったりします。
水虫の治療
水虫の治療には、一般に抗真菌薬が使われます。抗真菌薬には塗り薬と飲み薬があります。外用薬の効果を発揮させるためには、とにかく1日1回薬を継続して塗ることが大切です。特に入浴後は皮膚の角層が柔らかくなっていて、薬が浸み込みやすいので、きれいに洗って拭いた後、お風呂上がりに塗ってください。
また、広めに外用することが大事です。片方の足ゆびの間の皮がむけているだけでも、両足全体に塗ってください。さらに、患部の清潔、乾燥を心掛けることも大切です。ただし軽石などでこすりすぎるのはよくありません。
角層の表面を清潔に保つことは、白癬菌の新たな進入を防止し、水虫の悪化を防ぎます。症状が消えても、最低2ヶ月は根気よく治療を続ける必要があります。自分で勝手に治ったと思い込んだりせず、必ず医師に判断してもらいましょう。
また外用薬でかぶれる方もいるので、異常を感じたら塗るのを中止して相談してください。
内服薬は外用薬が効きにくい角質増殖型や爪白癬で使用されます。3~6ヶ月間の服用が必要となり、経過を見ながら医師が効果を判断します。内服薬は、時に肝機能障害や貧血などの副作用を招くことがありますので、血液検査で副作用をチェックしながら治療を進めていきます。また飲み合わせが悪い内服薬もありますので、受診時はお薬手帳をお持ちください。
最近は爪白癬に効果が高い外用薬がありますので、まずは外用で治療されることも多くなってきています。
いぼ(疣贅)
あやしいと思ったら大きくなる前に治療を
いぼは、ヒトパピローマウィルス(ヒト乳頭腫ウィルス)が皮膚のごくわずかな傷から侵入して感染することによって発症すると考えられています。よく見られる尋常性疣贅(いわゆるいぼ)は特に手足にできやすく、気付かないうちに大きくなったり、他の部位にうつったりすることがあります。また顔や腕、手の甲などに多発する扁平疣贅といういぼや外陰部にできる尖圭コンジローマといういぼもあります。
一方、中年以降から顔や首まわりに小さないぼができ始めることがあり、人目につきやすいことから気にされる方も少なくありません。しかし、この顔や首のイボは、多くはウィルス性のものではなく、老化現象の一種であることが多く、うつることはありません。
いぼを見つけたら皮膚科で相談
いぼができたからと言って、自分でむしって治そうとすると、かえってウィルスを撒き散らして増やしてしまう可能性があります。いぼを見つけた際は、数が少ないうちに皮膚科で相談しましょう。また、稀に悪性の腫瘍と似ているものもあるので、専門医への受診をお勧めいたします。
いぼの治療
当院のウィルス性いぼの治療には、液体窒素療法(冷凍凝固処置)、モノクロロ酢酸による腐食療法、ビタミンD3外用薬やスピール膏外用療法、内服療法、ブレオマイシン(抗がん剤)の局所注射、レーザー療法などがあります。個々の患者様に最も適していると考えられる方法を選んで、時には併用しながら治療していきます。
なお、どの治療法によっても、多くの場合1回の治療で治し切ることは難しく、繰り返して除去していくことになります。
また、顔や首の加齢性のいぼに対しては、液体窒素療法、切除術、中周波(デルマトロン)、レーザー治療などを行います。
単純ヘルペス
はやめに治療をはじめましょう
単純ヘルペスウィルス(1型・2型)の感染で生じます。口の周りをはじめ、上半身にできることの多い1型による「口唇ヘルペス」と、外陰部や臀部などの下半身にできることの多い2型による「性器ヘルペス」があります。いずれも一度治っても再発することが多い疾患です。
初感染で口内や外陰部に発疹が生じた時は、発熱や痛みが強く重症になることがありますが、2回目以降の再発の時は症状が軽くすむことが多いです。
単純ヘルペスの治療
単純ヘルペスの治療としては、ウィルスの増殖を抑える抗ウィルス剤の内服や外用を行います。発疹の出る前にピリピリ・ムズムズした感じなどの予兆の出ることが多く、その時点で内服を始めると早く治ります。しかし神経節(神経細胞が集まっている組織)に入り込んで潜伏している単純ヘルペスウィルスを薬で完全に排除することはできません。寝不足、疲労、風邪などによって免疫力が下がると増殖し、再発することがあります。特に「性器ヘルペス」は再発を繰り返すことが多く、この再発頻度を少なくするために、抗ウィルス剤を毎日少しずつ飲むことによって、再発リスクを低下させる治療(再発抑制療法)が行われることもあります。
なお、水疱にはウィルスが含まれていますので、ご自分の他の部位や周りの人にうつさないよう注意が必要です。
とびひ(伝染性膿痂疹)
まずはせっけんでしっかり洗いましょう
とびひは、正式には「伝染性膿痂疹(のうかしん)」と言い、皮膚への細菌感染によって発症し、人から人へとうつる疾患です。特にアトピー性皮膚炎の子どもは皮膚のバリア機能が低下しているために、とびひにかかりやすいので要注意です。また、成人でも皮膚の状態が悪いとかかることがあります。
掻きむしった手を介して、水ぶくれが全身へと広がる様子が、火事の火の粉が飛び火する様に似ているため、「とびひ」と呼ばれます。
とびひには、水ぶくれが生じる水疱性膿痂疹と、かさぶたができる痂皮(かひ)性膿痂疹の2種類があり、特徴はそれぞれ下記のとおりです。
- 水疱性膿痂疹
- 皮膚にできた水ぶくれが次第に膿をもつようになり、やがて破れると皮膚がめくれてただれます。痒みがあり、そこを掻いた手でほかの場所を触ると、あちこちに広がってしまいます。とびひの多くはこのタイプで、主な原因は黄色ブドウ球菌です。
- 痂皮性膿痂疹
- 皮膚の一部に膿をもった水ぶくれ(膿疱)が生じ、厚いかさぶたになります。炎症が強く、リンパ節が腫れたり、発熱やのどの痛みを伴ったりすることもあります。主に化膿レンサ球菌が原因となりますが、黄色ブドウ球菌も同時に感染していることもあります。
とびひの治療
とびひの治療は、まずはせっけんを使ってしっかり洗うことが大事です。その上で主に抗菌薬の飲み薬を使い原因菌を退治します。必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服や抗生剤軟膏や亜鉛華軟膏などの外用薬を使用し、痒みや炎症を抑えます。とびひは、ひどくならないうちに治療を始めると、より早く治せます。
最近は抗菌剤に耐性をもつ菌が原因になっていることもあります。また特に痂皮性膿痂疹の場合は抗菌剤をきちんと内服することが大事ですので、医師の指示に従ってください。
アタマジラミ・ケジラミ
アタマジラミはアタミジラミという虫が頭髪に棲みつくことで発症する疾患です。小学校低学年までの子どもに多く、頭をすりつけあって遊んだり、帽子などを共有したりしてうつっていきます。不潔にしているから生じるわけではありません。
シラミが付いて1か月程度してから、頭が痒くなり、痒みのために頭を掻きむしり湿疹になったりします。髪の毛に簡単に取れないフケのようなものがあればシラミの卵の可能性がありますので皮膚科を受診させてください。まれにまつ毛などにも寄生することがあります。
一方、ケジラミはケジラミという虫が陰毛に寄生することによって発症します。成人に多い疾患で、性的接触による直接的な感染が多いのですが、衣類・寝具などを介する間接的な感染も知られています。潜伏期は1~2ヶ月で、寄生部位の強い痒みが出現します。
ともに顕微鏡で毛に付着した虫や卵を見て診断します。
アタマジラミ・ケジラミの治療
治療では、シラミ駆除薬フェノトリン(スミスリン)を使用し駆除していきます。シャンプーを3日に1度、10日間程度使用することで、シラミを駆除します。虫卵に対しては駆除効果が無いので、成虫の駆除が済んでも、卵が孵化する1週間~10日程度は使用を続けてください。
帽子やマクラカバー、シーツなどはまめに洗濯してください。
周囲の人も注意深く観察し、症状があれば同時に治療する必要があります。
アタマジラミの説明・治療については豊島区のホームページもご覧ください。
手足口病
手足口病は、口の中や手足などに発疹が生じる感染症で、コクサッキーウィルスやエンテロウィルスなどによって起こります。感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染(便の中に排泄されたウィルスが口に入って感染する)などが知られています。症状としては、感染してから3~5日後に口の中、手のひら、足の裏や足背などに赤みをおびた発疹や小さな水ぶくれが現れます。口の中に水ぶくれができると痛みを伴い、食事が食べにくくなることがあります。発熱することもありますが、体温はあまり高くは上がらないことが多いです。まれに重症化するとけいれんなどを起こすことがあります。
手足口病の治療
特効薬は無く、特別な治療法もありません。
経過を観察しながら、症状に応じた治療を行います。口の中に水ぶくれがある時は、おかゆやプリンなど刺激にならないものを食べながら経過をみます。多くは数日のうちに治りますが、病原となるウィルスが複数あるために、別のウィルスに感染すると再度かかることがあります。
皮膚の症状が改善しても便などから長期間ウィルスを排泄するため、感染源になる可能性があります。治癒後もトイレの後の手洗いなどに注意して過ごしてください。
梅毒
病原体は梅毒トレポネーマで、主に性行為による皮膚・粘膜病変部の接触により感染します。
潜伏期間は約3週間で、症状としては感染部位に赤色の硬いしこりやただれができ、近くのリンパ節が腫脹します(第1期)。この時に痛みはなく、気付かれないまま経過することもあります。その後、3~12週間くらいの間に、発熱、倦怠感などの全身症状とともに、皮膚に様々なタイプの発疹が現れます(第2期)。体や手のひら、足の裏に赤い発疹が出たり、脱毛が生じたりすることもあります。この時の発疹も痛みやかゆみがないことが多いです。さらに10~30年の間に心臓や血管、脳が冒されることもあります(第3期)。
診断は主に採血で行います。
梅毒の治療
治療には抗菌薬を内服します。内服すると一時的に発熱したり発疹が悪化したりすることがあります。また、パートナーも同時に治療する必要があります。
妊娠中の方が感染すると母子感染が起こり、出生児が先天梅毒になることもありますので注意が必要です。
疥癬
疥癬は、ヒトヒゼンダニと呼ばれるダニが皮膚表面(角質層)に寄生して起こる感染症です。感染者との接触や寝具・衣類の共有によってうつります。どこで感染したかわからないまま発症することもよくあります。
ヒゼンダニが寄生してから1~2ヶ月してから体にかゆみが強い発疹が現れます。特に夜間にかゆみが強く、かきむしって眠れなくなることもあります。
手のひらや指の間に小さなトンネル状の穴(疥癬トンネル)ができたり、陰部に盛り上がった発疹ができたりすることが多く、一部をつまみ取って顕微鏡で虫や卵を認めることで診断します。
まれに免疫不全の方などで非常に多い数のヒトヒゼンダニが増殖し、手などがゴツゴツと角化する角化型疥癬の状態になることがあります。その場合は周囲に強い感染力があるため特に注意が必要です。
疥癬の治療
治療としては、駆虫薬(イベルメクチン)の内服、フェノトリンやクロタミトンなどの外用、また痒みを抑えるために抗アレルギー剤などを併用します。
衣類や寝具などはまめに洗濯してください。
ご家族で発症することもあり、周りの方もそろって治療する必要があります。