アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
スキンケアと外用薬でいい状態を維持し、重症の場合は注射薬なども検討していきましょう
当院院長はアトピー性皮膚炎の治療に長年たずさわってきた経験があります。軽症の方から、重症の方まで、それぞれの方ごとの治療目標をお伺いしながら、よりよい毎日の生活を送るためのサポートをしていきたいと思っています。
アトピー性皮膚炎の基本的な治療
- 保湿剤を使ったスキンケアでバリア機能を保つ
- 炎症を抑える外用薬(ステロイド外用薬、免疫抑制剤など)
- 内服薬(抗アレルギー薬、JAK阻害薬など)
- 注射薬
- 悪化因子をさける
良い状態を維持して悪化させない予防的な治療
アトピー性皮膚炎の治療において一番大切なのは、保湿をして肌の状態をととのえることと外用薬による治療です。
一般的な外用剤や内服薬では効果が乏しい重症型のアトピー性皮膚炎では、ナローバンドUVB紫外線療法の併用、JAK阻害薬(ウパダシチニブ(リンヴォック)、バリシチニブ(オルミエント)、アブロシチニブ(サイバインコ))やステロイド、シクロスポリンの内服、デュピルマブ(デュピクセント)、ネモリズマブ(ミチーガ)の注射、ご希望に応じて入院施設をご紹介しながら治療法を再検討していきます。
また目の周りの難治性の症状が続く場合は、眼科と連携を取りながら、必要に応じてパッチテストをして合う薬を探していきます。
アトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹が顔や体、四肢に左右対称にできる慢性的な皮膚疾患で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。皮膚症状が年齢によって変化するのも特徴的です。
成長に伴い体の症状は落ち着いても、首や手など体の一部だけに症状が残る方もいます。また夏場は汗をかくことで、冬場は乾燥で悪化することが多いです。
アトピー性皮膚炎の原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、遺伝的な体質に加え、環境的要因が影響して発症すると考えられています。多くの患者様は、皮膚が乾燥しやすい素因(ドライスキン)とアトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)を併せもっています。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療では、まずは症状にあった外用剤で炎症を抑え、保湿をして肌の状態を整えることが大切です。
アトピー性皮膚炎の外用薬
- 保湿剤(ヘパリン類似物質、ワセリンなど)
- ステロイド外用薬
- 免疫抑制剤の外用薬(タクロリムス(プロトピック)、デルゴシチニブ(コレクチム)、ジファミラスト(モイゼルト))
- その他
ステロイドの塗り薬は、炎症を強く抑える作用を有し、免疫抑制外用薬は、過剰な免疫反応を抑制します。またそれ以外の外用薬も適切に使っていくことで症状を早く改善し、良い状態を維持することが可能になります。
ほかに、痒みを鎮めるために抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の飲み薬を用いたり、他の治療でなかなか良くならない重症な方では、JAK阻害薬(ウパダシチニブ(リンヴォック)、バリシチニブ(オルミエント)、アブロシチニブ(サイバインコ))やステロイド、シクロスポリンの飲み薬を使用したり、デュピルマブ(デュピクセント)、ネモリズマブ(ミチーガ)の注射を併用したりすることがあります。
JAK阻害薬(ウパダシチニブ(リンヴォック)、バリシチニブ(オルミエント)、アブロシチニブ(サイバインコ))はかゆみを抑える効果が強い飲み薬です。
アトピー性皮膚炎の発症機序に関与するサイトカイ ンの伝達に関与するJAK-STATシグナル伝達経路を阻害する治療薬で、飲んだ翌日からかゆみが楽になる方もいます。
短期間だけ内服することも可能ですが、事前に採血やレントゲン検査が必要で、にきびや風邪の症状、帯状疱疹などが出現することがあるので、定期的な診察や検査が必要です。
デュピルマブ(デュピクセント)はIL-4、IL-13というサイトカインの働きを抑え、皮膚の炎症反応を抑える生物学的製剤の治療薬です。
中等症以上のアトピー性皮膚炎で、従来の内服薬や外用薬では十分は効果が得られなかった方にも効果の高い治療法です。注射を継続することでかゆみが楽になったり、炎症が長く続くことで固くなってしまった皮膚が柔らかくなったりしていきます。
デュピルマブ(デュピクセント)は初回来院時に注射ができるわけではなく、事前の評価などが必要になります。また注射は1回で終わりではなく、2週間隔で継続して注射をしていくことが必要になります。自己注射ができるようになると、通院間隔は1-3か月に1回程度になります。
ネモリズマブ(ミチーガ)はアトピー性皮膚炎のかゆみの原因になるIL-31を抑える注射薬です。かゆみが強く、皮膚の炎症症状があってもあまりひどくない方に効果のあるお薬になります。
4週間ごとに継続して注射をしていくことが必要になります。自己注射も認められるようになりました。
JAK阻害薬(ウパダシチニブ(リンヴォック)、バリシチニブ(オルミエント)、アブロシチニブ(サイバインコ))の飲み薬やデュピルマブ(デュピクセント)、ネモリズマブ(ミチーガ)の注射薬は費用面での負担が大きい治療薬ですので、適応があるかを含め必ず事前の診察をお受けください。
デュピルマブ(デュピクセント)について詳しくはこちら
ウパダシチニブ(リンヴォック)について詳しくはこちら
アトピー性皮膚炎の発疹の中でも特に目の周りの湿疹については注意が必要です。目の周りに湿疹があり、掻いたりたたいたりする刺激が続くことで白内障や網膜剥離がおきる可能性があると言われています。
ステロイド外用薬を使用してかゆみが治まったからといって、すぐに治療をやめてしまうと再発することが多い場所のため、注意深く外用剤を選びながら治療していく必要があります。炎症が長引くと色素沈着になってしまうこともありますが、炎症が落ち着かない時に美白剤などを使うとさらに悪化することもあるので注意が必要です。合わない眼軟膏でかぶれてしまい、気づかずに使い続けて悪化する方もいます。必要に応じて眼科と連携を取りながらパッチテストをして使用できる薬剤を見つけていきます。
また当院ではかゆみの強いアトピー性皮膚炎の方に対し、全身型ナローバンドUVB紫外線療法やエキシマライト ターゲット型光線療法も行っています。
治療法をどのように組み合わせて、どの程度使用するかは、ご希望をうかがった上で、医師がそれぞれの皮膚の状態をよく診て判断します。塗り方・塗る場所・回数・使用期間などについての指示は、きちんと守りましょう。
毎日のスキンケアと外用は、はじめは大変に思うかもしれませんが、症状が落ち着くと塗る量も減り楽になってきます。
ひどくなってから外用するのではなく、良い状態を維持して悪化させない予防的な治療が大事です(プロアクティブ療法)。また悪化因子を探り除去していくことも大切な治療になります。
アトピー性皮膚炎の治療の目標
アトピー性皮膚炎の治療の目標は、この疾患であることをそれほど意識しないで日常生活を送ることができ、その状態を維持することだと思います。
医師の指示に従って、外用薬や内服薬や注射薬を適切に使い、スキンケアを上手に行っていけば、多くの人は、この目標を達成できます。定期的に通院していただき、皮膚の良い状態を維持できるようにしましょう。
ステロイド外用薬についての当院の考え方
ステロイドの塗り薬に抵抗感をお持ちの方は少なくありません。しかし、症状に応じて適切な強さの外用薬を選び、必要な量を必要な期間だけ、適切な部位に使うことが大事です。
症状が軽くなったら塗る回数を減らしたり、弱いものに変えたりしていけば心配はいりません。
また、かゆみが強い頭部の発疹では、症状が悪化したときだけ、クロベタゾールプロピオン酸エステルシャンプー(コムクロシャンプー)を使うと改善することもあります。
副作用をおそれて外用が不十分だったり、早めにやめてしまったりするとすぐに再発してしまいます。また、だらだらと弱い薬を塗り続けることで、症状が治まらないだけではなく、薬にかぶれることもあります。
当院ではステロイド以外の免疫抑制外用薬(タクロリムス(プロトピック)、デルゴシチニブ(コレクチム)、ジファミラスト(モイゼルト))などを積極的に取り入れていますが、症状がひどい時に外用すると刺激が強いこともあるため、炎症の程度や感染症の有無などの状態を見て薬を切り替えていきます。
ご不安がある時は、どうぞお気持ちをお伝えください。
ナローバンドUVB紫外線療法を導入
当院では、アトピー性皮膚炎の難治性掻痒や乾癬、白斑、掌蹠膿疱症などに対して、全身型の紫外線療法(ナローバンドUVB紫外線療法)を行っています。
ナローバンドUVB紫外線療法は、太陽光に含まれる紫外線(UVA、UVB、UVC)のうち、皮膚治療に有効性が確認された波長域(311±2nm)を持つ紫外線を照射する方法です。
ナローバンドUVB紫外線療法なら、皮膚を赤くしたりやけどさせたりする300nm以下の有害な波長をカットした紫外線をごく短時間だけ当てるため、副作用を大幅に少なくすることが可能で、安全かつ効果的な紫外線治療が行えます。
当院のナローバンドUVB療法器は全身型ですので、広範囲の発疹を短時間で治療することができます。また顔に紫外線を当てたくない場合には防御するシールドがありますのでご安心ください。
エキシマライト ターゲット型光線療法を導入
エキシマライト ターゲット型光線療法は、紫外線の中でも308ナノメートルの波長だけを高出力で小さな範囲に照射する治療法です。
アトピー性皮膚炎では、下肢の固くなった限局性の発疹など、小さな範囲の難治性部位の治療にはエキシマライト ターゲット型光線療法が適しています。
アトピー性皮膚炎の他にも、ナローバンドUVB紫外線療法と同じく、尋常性乾癬、尋常性白斑、掌蹠膿疱症、円形脱毛症などに効果がみとめられています。
照射時はゴーグルをかけ、目を保護して照射していきます。
短時間で終了し痛みもないため、子供にも照射することができます。
炎症後の色素沈着の治療
アトピー性皮膚炎で長期間炎症が続き、掻くことを繰り返しているうちにお顔や首が黒っぽくなり色素沈着を起こすことがあります。
特に首の色素沈着、黒ずみはdirty neck とも言われ、目につくところですがメイクなどでも隠しにくく気にされる方も多くいらっしゃいます。
アトピー性皮膚炎の適切な治療をしなかったり、弱すぎる外用薬を使っていたりすることで、治療が不十分な時期が長く続き、掻くことを繰り返してしまい炎症が長引くことで生じてきます。
色素沈着を悪化させないためには、皮膚の症状に応じて、必要な強さのステロイド外用薬やタクロリムス(プロトピック)外用薬、デルゴシチニブ(コレクチム)、ジファミラスト(モイゼルト)外用薬などを継続して使ったり、デュピルマブ(デュピクセント)注射などを継続したりすることで炎症を抑えることが一番大事な治療になります。
赤みやかゆみが良くなったからといってすぐに外用をやめずに、指示された回数期間、外用を継続することが大切です。
赤みやかゆみの症状が改善してからもタクロリムス外用薬(プロトピック)などを定期的に使うことで色素沈着が改善することがあります。
色素沈着に対して、美白剤のビタミンCローション、ハイドロキノンやルミキシル、シスペラなどの美白外用薬(自費美容診療)を使うこともありますが、炎症が完全に治まっていない時期に使用すると悪化することもあり、様子を見ながら使用していきます。
また、巣鴨さくらなみき皮膚科では、なかなか改善しない顔面頸部の色素沈着に対し、自費美容診療でピコレーザートーニングやジェネシスなどを継続して行いながら症状を改善していく治療(カスタマイズ治療)も行っておりますので、ご興味のある方はお問い合わせください。